在学していた麻布獣医科大学では、当時、学生の実習や研究などで飼育されていた動物の管理や世話は学生の仕事になっていた。牛・馬・豚・羊・山羊・鶏・犬・猫・ウサギ・ラット・マウス・鳥類などがいた。そういえば、アヒル、モルモット、ハムスターも見たことがあった。また、動物園で亡くなった動物なども運び込まれて、通常の授業とは別で病理解剖なども見学することができた。

普通のことだが、動物の管理は365日、1日も休むことなく続けられる。少なくとも朝と夕方の体温測定をはじめ、大型動物では四肢裏のチェック、妊娠動物の毎日の体重測定と新生子の管理など、挙げればたくさんでてくる。

 

 

子羊の世話をする小嶋(22~23歳ころと思う?)

内科学や産科・繁殖学の講義は牛が中心で、外科学は馬と犬が中心だった。まさか、羊の看護をやるとは思わなかった(当時は学生で、獣医師免許はなかったので、治療はできなかった)。

 

 

 

 

元気になった羊の親子

羊の毛刈りをする時期になると、班のメンバーが『小嶋、お前も刈ってもらえよ』とかいいあった会話が懐かしい。みんな、どうしているかな。そういえば、羊の毛刈りのあとは、みんなで居酒屋に行ったな。居酒屋に行ったときの話をすると長編物語になるのでやめておく。みんな、居酒屋に行って大人になるのだ!

 

 

 

 

 

羊が出産後に少し衰弱したので、生まれたばかりの羊の世話と管理を班でやることになり、毎日の授業になるべく支障がないように段取り、少なくとも朝・昼・夕方・夜に対応した。羊の母親も子供も元気になった。数頭いる子羊の1頭が私のあとをついて歩くようになり、とてもうれしかった気持ちがいまでも忘れられない。同じ班の女子が冗談っぽく、『小嶋君は女子にはモテないのに、羊には人気があるのね~。ファンクラブでもつくったら』とか言った。すかさず、『君たちより羊のほうが人間らしい心を持っているよ』とか言ったような覚えがある。

大きくなった子羊は、私が大学内で歩いていると、私服でも白衣姿でも私をみつけて、柵のほうに寄って来た。識別能力があるのだなと、感心した。犬に好かれたとか、猫に好かれた話はいくらでも聞くが、羊に好かれた話は聞いたことがない。その後、大学内で羊に好かれている話は誰にもしたことがなかった。自分と羊だけの秘密であった(笑)。

卒業後、羊に会うことはなかったが、羊の寿命から考えると、今はこの世にはいない。しかし、そこで体験した管理や世話は、動物種が変わっても基本的なことは、『新潟ねこの病院』で生きている。